『月は 人を 狂わす』 昔から、狼男が現れたり、魔女が集会を行うのは、満月の夜だと言われている。 気が触れるから長い時間月光にあたるな、なんて話も聞いた事がある。 けど、月のない夜は光を嫌うモノ達が蠢くのだから、満月でも新月でも結局は関係なく、術者は心休まる時がない。 「夜は外出するな、なんて言ってられないもんね」 日が昇る頃起きて、日が沈んだら眠ればいい時代とは違うから。 その為に陰陽師や外法師がいるのだ。 ――綺麗な月の夜だ。 満月が狂気の象徴なんて誰が言ったのか。 こんなに優しい光を放っているのに。 太陽の神が昼を守っているように、月の神が夜を守っている。 「彩華。そろそろ部屋に戻れ。風邪ひくぞ」 この月がある限り、わたしは大丈夫。 |