月華抄-月隠- 11
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 ざぁ……と軽い音を立てながら消えていく土塊を見届けた桔梗は、その場に座りこんだ。床に片手をついて己の身体を支える。そうしないと倒れこみそうだった。
 荒い呼吸を繰り返していると、
「ちょっと!」
 頭上から幼子の声が聞こえた。その姿を確認しようにも、顔をあげることすらままならない。
 桔梗は苦しさを紛らわすように床に爪をたてた。
 不快感を煽る音が小さく鳴った。
「ちょっと! 聞こえてるのっ?」
 さらに強い口調で咎められる。
 それを無視する形で呼吸を整えて、ようやく桔梗が顔をあげると、目を三角にした子供が立っていた。例の妖の子供だ。
「なにしてるのよこんなところで」
 ――何をしていると言われても。
 返答したくても今の桔梗にはその余裕もない。
 子供の眉が吊り上る。
「……なんでそんなに弱ってるのよ」
 しばし様子をうかがっていた子供はわずかに怒りを治めたようだった。首をかしげるようにして、目の前に座っている桔梗を見下ろすその表情には、戸惑いの色が浮かんでいる。
「なにしてるのよ。待ってたのに」
 再度問いかけられた桔梗は口を開こうとしたが、いまだ呼吸すらも満足にできないでいる。震える唇で祝詞を口ずさむと、少しだけ楽になった気がして、安堵の息をつく。
「なんでと、言われても」
 それでも元のように滑らかには動かない。桔梗が言葉につかえながらも返すと、子供はまた不快そうに口を尖らせた。
「鬼ごっこしましょう、ってあたし言ったでしょ。おねえちゃんが鬼なんだから、追いかけてきてくれなきゃ困るわ」
「……そんなの」
 今度は桔梗が顔を歪める番だった。
「あんなモノをけしかけてきて、わたしが鬼≠セと言われても、こちらが困る」
 強めの口調で告げると、子供はきょとんとする。
 その態度に少々苛立つ。具合が悪いのもひとつの要因だった。桔梗は、批判をこめて子供を凝視する。
「とぼけるな。襲ってきたのはそっちだろう?」
 桔梗の怒気を感じとったのか、子供は怯えた様子で一歩後ろへ下がった。自身の身を守るように胸の前で交差した拳がわずかに震えている。今にも踵を返して走り去りそうだ。
「……すまない」
 ぽつりと呟いて桔梗は怒りを治めた。 
 こうして姿を現してくれたというのに、情報を得られないままふたたび逃げられては意味がない。それに、嘘を言っているようには見えなかった。
「あんなモノ、って、なんなの?」
 子供がおずおずと問いかける。
 しばしの沈黙のあと口を開く。
「……わたしの友人に似た、土でできた人形だ。それが突然襲ってきたから」
「それあたしじゃない! おねえちゃんを傷つける気はないもん」
 簡潔に告げた桔梗の言葉を遮るように子供が主張する。真っ直ぐに桔梗を見つめる目は真剣そのものだ。
「わかった。信じる」
 桔梗が頷くと、子供の顔がぱぁっと明るくなった。それに微笑で返し、前屈みだった身体を起こす。深く息を吐き出してから、近くの柱へと移動する。
 寄りかかるようにすると楽になったのか、桔梗の表情が和らいだ。
「だいじょうぶ、なの?」
 そろりと桔梗に近づいて、子供は彼女の目の前に座った。
「うん」
 大丈夫とは言い難い体調ではあったが、桔梗は笑顔とともにそう答える。
 倒れる前にここから抜け出さなければならないのだ。
 桔梗は心の中で己を励まし、
「訊ねてもいいかな」
 できるだけ優しく質問する。
 強く問い詰めたい気持ちがなかったわけではない。けれども、敵意を見せない相手にこちらが感情を剥き出しにする理由も、今のところない。
 ある程度の警戒は必要だろうが、この子供相手にそれを心配することはないだろう。
 そう判断したのだった。
「繰り返しになるが……あの土人形は知らないんだな?」
 子供が首を縦に振った。
「知らないわ。あたしがやったのは、ここに閉じこめられたからむかついて、あたしを退治しに来たおねえちゃんを同じようにしただけよ」
 自らの犯行を述べる子供に、桔梗は思わず笑みを洩らす。
 悪戯が過ぎるだけで根が悪い妖ではないのかもしれない。だからといってすべてを許せるわけではないのだが。
 少しだけ真顔を作り質問を続ける。
「退治しに来たって、わたしの前に陰陽師が来ているだろう?」
 並みの陰陽師では事足りず、玄翔が状況確認に来ているはずだ。現在、彼を凌ぐ凄腕の陰陽師はいない。
「アレはいや! 嫌い! そんな話したくないっ」
 突如として叫ぶ子供の顔は、心なしか強張っている。
「あれ、か……」
 桔梗は苦虫を噛み潰したような表情になる。
 妖の天敵と言えば、まず陰陽師が筆頭にあげられるだろう。だから嫌われるのは十分承知しているのだが――師匠をあれ′トばわりされるのは気分がよろしくなかった。
 だが仕方がない、と桔梗はため息をつく。
 敵同士が心を通わせるのは難しい。一方的にではないにしろ、こちらは内裏に棲む妖を排除しようとしているのだから。
 幾分か青ざめた様子の子供を宥めるように手を伸ばし、頭を軽く撫でると、子供ははにかんだような笑顔を見せた。
「わかった。その話は終わりにしよう。どうしてここで騒ぎを起こしたんだ?」
 内裏には妖が多くいる。宮仕えする者もある程度は慣れているため、陰陽師が呼ばれるほどの事柄は滅多にない。今回は大した被害はなかったのだが、早々に解決した方がいいとの判断で桔梗が呼ばれることになったのだった。
「出られないんだもの」
「なに?」
 思いもよらない返答に、桔梗は調子外れな声をあげた。
「出たい……なら、出ればいいんじゃないかな」
 子供が頬を膨らませる。桔梗が返した言葉は気に入らなかったようだ。
「だから、出たいの。なのに、変な結界があって、あんたたちが内裏って言ってるところから外には出られないの!」
「出られない……」
 鸚鵡返しに呟いて、桔梗はしばし考える。それは有り得ないと返そうとしたが、ひとつ思い至ったことがあった。
 変な結界≠ニは、玄翔が張った結界のことだろう。内裏と大内裏、そして都を包みこむように術が施されているはずだ。この結界は外部からの攻撃を守るためのものなのだが――。
「中のモノを外へ出さないと、言っていたような」
 呟くと、子供はそれだと言わんばかりに頷きを繰り返した。
 いつの講義だったか忘れてしまったが、陰陽の均衡を崩さないためにそうしているのだと教えられた。陰陽師がすべての負の因子を消し去らないのはそのためだ。
 だから都の様々なところに一定の量の妖がいるのだという。
「……この場合は、お師匠様を責めるべきなのか……?」
 桔梗は低く唸った。しかし、いいや、とかぶりを振る。
 都がこの地へ移ってから数百年経過している。最初に結界を張ったのは、玄翔とは別の陰陽師だ。彼はその効果が継続するようにしているだけに過ぎない。しかし――この騒動のきっかけを作ったのは己の仲間とも言える。原因がわかってしまえば何てことはない出来事。
 誰かを責める気はない、のだが――。
 桔梗の心に様々な感情が渦巻く。
「母様<かかさま>が呼んでる」
 ふいに子供が言った。
 桔梗は我に返り顔をあげる。子供は輝かせた目で壁を見つめていた。正確にはその向こうにだろう。
「母様が近くにいるのか?」
 訊ねると、子供は嬉しそうに声をあげた。
「ちょっと離れているけど、いるわ」
 そう言って小走りに行ってしまう。
「あ、待って」
 桔梗が慌てて追いかけると、子供は紫宸殿の階のところに立っていた。その横に立ち、眩しさに目を細める。
 南庭《なんてい》と呼ばれる前面の部分に敷き詰められた白砂が光を反射している。長い間薄暗い建物の中にいたためか、外の光が目に突き刺さるように痛い。
 瞬きを繰り返してようやく目が慣れてきた。桔梗は外へと意識をやる。
 うっすらと、だがたしかに気配を感じる。
 あの日、大路で遭遇した幽霊のものだと確信した。
「……外に出たい。母様と一緒に帰る」
 見上げてくる子供の瞳は潤んでいた。
 桔梗は周囲に視線を走らせた。がらんとした庭には当然誰もいない。少しだけ辺りの空気が変わっている気がして、そっと手を伸ばす。目に見えない障害物は綺麗に消えてていて、桔梗の手は宙を掻くばかりだった。
 何をやってもどうにもできない状態だったというのに、今は難なく出られそうだ。
「あっち」
 子供が指さしたのは庭のさらに先。南方に位置する門の名は承明門である。
 たしかに、あの辺りから妖の気配が漂ってくる。
 そんなことを考えていると、右手に仄かな温もりを感じて、桔梗は視線を下ろした。見上げてくる子供と目があった。
「ゆくか?」
「うん……でも」
 子供の顔が泣きそうなほど歪む。
「大丈夫だ」
 桔梗ははっきりと告げる。
 この異空間の結界を張った妖の意識は、今は外へと向いている。己を退治しに来たと思われる術者に念晴らししようと、その者をここに閉じこめた。その必要がなくなれば術は解けたも同然だ。
「行こう」
 子供を促して桔梗は階から庭へと降りた。異空間へ取りこまれた際に履物はどこかへ消えてしまったのか、足袋しか履いていなかった。敷き詰められた小石が当たり、少々足裏が痛い。
 だが気にしていられない、と桔梗は心の中で呟く。二度とない機会かもしれないのだ。
 門の方から風が吹いてくる。先ほどまでなかった匂いも、わずかだが感じた。雨に濡れた草木の匂いだと思った。
 柔らかい風がふたりの頬を優しく撫でた。
 くすぐったそうに身をよじる子供の顔には、もう翳りはない。頬をほんのりと紅潮させて期待に心を躍らせているのが傍目からもわかった。
 歩きながら桔梗は小声で言葉を紡ぐ。
 妖の子供を外へ出せなければ意味がない。どうすればいいかと考えて、子供に妖以外の気を纏わせることを思いついた。
 あまり効果はないかもしれないが、やってみるしかなかった。
 流れてきた瑞々しい草の香りを自分たちの身体に纏わせて誤魔化すことができれば、外へと難なく出られるかもしれない。結界を謀る効果は一時的でいいのだ。
 桔梗は門へ近づくにつれて、心臓が早鐘を打っているのを感じた。
 今更迷う暇もない。もう目の前まで来ている。
 空いている左手の指を軽く握り、桔梗は印を結ぶ。
「――」
 地面からむせ返るほどの草の香りが立ち上った。次の瞬間、視界が白に染まる。しかし眩しさはない。
 白一色が広がる空間の一点が、ぐにゃりと歪む。
「母様!」
 子供が駆け出した。
 桔梗の制止は聞こえていないのか、真っ直ぐに走っていく。そこへ到着する少し前に、歪みは人の形をとった。
 白い衣を身に着けたそれは女だった。顔はよく見えなかったが、大路の幽霊に間違いない。雰囲気も子供と似ている、と桔梗は思う。
 女が桔梗に向かって頭を下げた。そうして子供の手をとり踵を返す。ふたりの姿は徐々に小さくなっていく。
「これで、終わった……」
 長い吐息とともに心情を吐き出した桔梗はその場に膝をついた。
 意識を保っているのが精一杯で、あと少し気を抜いたら、途端に気絶するだろう。その前にどこかへ移動しなければ……と頭ではわかっているのだが、身体がついていかない。
 ここはどこなのか。結界は崩れたから、現世のはずだ。暗闇の中に炎が浮かんでいるのは見えるが、辺りの様子がわからない。
 回る視界に耐えられず、桔梗は目を瞑った。
「――い。――ぶか――」
 何かの声がしたのに気づきゆるゆると頭をあげると、松明に照らされた男の顔が見えた。心配そうにこちらを見下ろしている。
「女房殿? いかがなされた」
 身なりから、男の正体は検非違使であろうと思われた。眉をひそめ、少し離れたところから様子をうかがっている。
 辺りは真っ暗だ。結界内に取りこまれる前はまだ夕方にもなっていないはずだった。あれからかなりの時間が経過している。
「……失礼だが……あなたは人か?」
 躊躇いがちに投げかけられた質問に、桔梗は口元を緩めた。
 無理もない。髢<かもじ>も衣装もひどいありさまだ。打ち捨てられた女の無念がこの世に現れていると考えられてもおかしくはない。
「ご安心を……もしよろしければ、ひとつ頼まれてはいただけませんか?」
 うまく動かない唇を動かして、
「陰陽寮の……玄翔様に連絡を」
 どうにか告げた桔梗は意識を手放した。

 翌朝、紫陽花が一房手折られていることに、とある女房が気づいた。
 妖の仕業か、はたまた誰かの悪戯か。何にせよ内裏が荒らされた、由々しきことだと騒ぎ立てる者もいた。
 しかし、今上帝がまったく気にしていないことから、この件は次第に忘れられていった。
 大路と内裏の幽霊騒ぎは、このときからなくなったという。

  ◇ ◇ ◇

 老人は文机の前に座り笑みをこぼした。
「まずまずといったところか。まあ、及第点ぎりぎりではあるが」
 燈台が照らすのみの薄暗い部屋で呟いている。
「だがもう少し洗練された仕事の進め方ができなかったものか。怪我もしたようであるし。――そうは思わぬか?」
 部屋には老人の他は誰もいない。それなのに、老人の意識は誰か≠ノ向けられている。
「――」
 老人の顔から笑みが消えた。
 おもむろに立ち上がり、無駄のない動きで部屋の隅へと移動する。そこには彼が愛用している厨子棚が置いてあった。
 両開きの扉を開けて中を覗いた老人は、途端に渋い顔をする。
 中には、何かが割れた破片が散らばっていた。燈台の明かりを受けて、破片のひとつがきらりと光った。
「……逃がしたか。残念な」
 言葉とは裏腹に、彼の表情は生き生きとしていた。唇に薄く笑みを履き、傍目からは落胆しているようには見えない。
 思案するような仕草をしてから、老人はそっと扉を閉めた。

  ◇ ◇ ◇

「まぁまぁまぁ!」
 突然聞こえてきた自身を咎める声に、桔梗はぎくりと肩を震わせた。
「……桔梗様? 何をしていらっしゃるのですか?」
 声の主は、身動きの取れない桔梗をなおも攻めたてる。
 逃げることも叶わない。すでに見つかっているし、邸から出られないのだから意味がない。
 桔梗は諦めてそろそろと振り返った。
 思った通り、声の主――瑠璃の目は僅かながらつり上っていた。
「……起きていてもいい、と言ったじゃないか」
 我ながら子供じみた言い訳だと桔梗は思う。
「ええ。言いましたわ」
 にっこりと笑顔を見せる瑠璃にただならぬ雰囲気を感じとったがもう遅い。いくら自分が作った式神とはいえ、彼女が本気で怒っているときに太刀打ちできないのは、嫌というほどわかっている。
 瑠璃が目の前に座ったので、桔梗は居住まいを正した。
「いつまでも床に臥せっていては桔梗様も退屈でしょうから、起きてもよい、とは言いました」
 笑みを絶やさない彼女の振る舞いは逆に怖い。
 桔梗は、今は大人しく小言を受け入れることにした。反論があれば瑠璃の言い分が終わってからの方がよい。
「ですがそれは、身体に負担がかからない程度に、です。陰陽道の勉強もよいですが、今一番桔梗様がしなければならないのは、身体を休めることです。当然頭もです。暇つぶしならば、いただいた絵巻がありますでしょう?」
「それはそうなんだけど」
 たしかに時間を紛らわせる物はこの邸にも色々ある。譲り受けた物もあるし、祖母が残した書物もある。どれも興味深い内容で、満足に動けないにも関わらず退屈だと思うことはなかった。
 しかしそれにも限度はある。
 内裏で倒れてから三日ほど寝込んだらしい。らしい、というのは意識が朦朧としていたため、桔梗もよく覚えていないためだ。
 紫陽花の持つ毒が全身を駆け巡り、あと数刻遅かったらどうにかなっていたかもしれない、とは忍の言だ。彼の煎じた解毒剤で一度意識が戻ったものの、すぐに眠ってしまったのだという。
 だから瑠璃が心配するのは無理もない。桔梗もそれはよくわかっているので、強く反論できないでいる。
 しばし無言で向きあっていると、瑠璃はため息をついた。
「……あと二日はのんびりしていてください。それ以降は何も言いませんから」
「わかった」
 桔梗が頷くと、瑠璃は音もなく立ち上がった。
「ではこれは、わたくしが片付けておきますわね」
 先ほどまで桔梗が読んでいた書物を手に取り、有無を言わさぬ笑顔で告げる彼女を、誰が止められようか。
 目にも止まらぬ速さで部屋を出ていく瑠璃の後姿を見つめ、桔梗は苦笑いする。
 その入れ違いに女が入ってきた。同じく式神の玻璃だ。両手で硯箱<すずりばこ>を持っている。
「桔梗様、お届け物です」
 硯箱は、筆や墨など書き物に使われる道具を入れる他に、贈り物や手紙など贈答にも用いられている。
「わたしに何が……」
 目の前に置かれた箱をまじまじと見つめてから、桔梗はそっと開けてみた。中には薄手の衣と文らしき紙が入っていた。
 誰が贈ってきたのかこれだけでは見当もつかない。文を手にして読み進めた桔梗の目が丸くなる。
 流暢な文字には見覚えがあった。送り主は高彬だった。文には、あのときの占いの礼だと書かれていた。
 桔梗は衣を広げてみた。
 薄手のそれは、光沢のある白い袿だった。袖の下あたりから裾にかけて薄い藤色で花の刺繍が施されている。素人目にも高価な値がつくだろうと思われた。
 今まで愛用していた袿は、先日内裏で駄目にしてしまった。代わりの物をと考えていたところだったので、嬉しくはある。
 しかし桔梗は困った顔をして、袿を膝の上に置いた。
 良い品物だが分不相応な気がする。――のだが、送り返すのは失礼だ。ここはありがたく受け取っておくべきだろう。
「お礼状を送らなければ」
「では、わたくしが後でお届けします」
「うん。お願い」
 主の言葉に頷いて、玻璃は立ち上がる。
 ひとりになった桔梗は文の続きに目を通した。
 件の紫陽花を譲り受けた寺の親株が枯れてしまったそうだ。ちょうど内裏で倒れた日のことらしい。そして、代わりにその根元から新しく芽吹いているのが発見された。
 来年の今頃には綺麗な花を咲かせるだろう。
 桔梗は文を元のように折りたたむと外を見やった。
 雲がところどころあるものの良い天気だ。気分転換に外へと出たいところだが、瑠璃にきつく止めれらている。こっそり出たとしても後でわかってしまうし、身体が重い感じがあるので言うことを聞いておいた方がいいだろう。
 ふぅ、とため息をついて、桔梗はぼんやりと外を眺めた。



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